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トリプトファンとは?効果・食品・摂取量・サプリ・副作用までわかりやすく解説

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本記事は一般的な情報提供を目的としており、特定の製品の効能・効果を示すものではありません。体調に不安がある方は医師等の専門家にご相談ください。

導入(イントロダクション)

なんとなく気分が晴れない、寝つきが悪い、朝のだるさが抜けない??。そんなときに見直したい栄養素がトリプトファンです。トリプトファンは、脳内でセロトニン(気分の安定)メラトニン(睡眠)の材料になる必須アミノ酸。心の安定と睡眠リズムの土台を担う、とても身近で大切な成分です。

本記事は厚生労働省およびWHO(世界保健機関)の公開情報を参考に、科学的知見に基づいて構成しています。妊娠中や服薬中の方の注意点など、医療的観点も公的情報を基に丁寧に解説します。

⚠️ 注意 本記事は一般的な情報提供を目的としています。体調や治療中の方は、自己判断での過量摂取を避け、必ず医師・薬剤師等の専門家にご相談ください。

第1章:トリプトファンとは?(必須アミノ酸の基礎)

私たちの体は、約20種類のアミノ酸からできています。そのうちの9種類は体内で合成できない「必須アミノ酸」と呼ばれ、食事から摂取しなければなりません。トリプトファン(Tryptophan)はその一つで、私たちの“こころと体のリズム”を整えるうえで欠かせない存在です。

トリプトファンは、体内でセロトニンメラトニンといった重要な物質に変化します。セロトニンは「幸せホルモン」とも呼ばれ、ストレスを和らげたり、気分を安定させたりする働きを持っています。夜になるとセロトニンは「睡眠ホルモン」として知られるメラトニンの材料となり、自然な眠りをサポートします。つまり、トリプトファンは昼の“心の安定”と夜の“眠り”をつなぐスイッチのような役割を果たしています。

また、トリプトファンがうまく働くためには、他の栄養素とのバランスも大切です。特にビタミンB6、ナイアシン(ビタミンB3)、鉄、マグネシウムなどは、セロトニン合成に欠かせない補助栄養素として知られています。これらを一緒に摂ることで、トリプトファンの働きをより引き出せます。厚生労働省の「日本人の食事摂取基準(2025年版)」でも、アミノ酸バランスの取れた食事の重要性が示されています。

ポイント トリプトファンは体内で作れない必須アミノ酸。セロトニン・メラトニンの材料になり、ビタミンB6・鉄・マグネシウムなどと一緒に、肉・魚・大豆・乳製品をバランスよく摂るのがコツです。

第2章:効果 ─ セロトニン・メラトニンとの関係

セロトニンは、脳内で感情のバランスを整える神経伝達物質です。不安やイライラを抑え、穏やかな気持ちを保つために欠かせません。セロトニンを直接摂ることはできないため、その原料となるトリプトファンを食事から摂ることが重要です。

日中につくられたセロトニンは、夜になるとメラトニンへと変化し、体温や血圧を自然に下げて入眠をサポートします。朝にトリプトファンを含む食事を摂り、日中に活動して、夜は強い光(特にブルーライト)を避ける──この流れが整うと、昼は活動的に、夜はリラックスして眠れるという理想的なリズムが生まれます。

厚労働省やWHOのガイドラインでも、規則正しい食事・睡眠・光のリズムの維持が推奨されています。トリプトファンはその土台となる栄養素です。

第3章:多く含む食品一覧(取り入れやすい食材)

トリプトファンは、特別な食品だけに含まれているわけではありません。実は、日常的に食べている多くの食材に含まれています。意識してバランスよく食べることで、自然と必要量を摂ることができます。

乳製品 ─ 手軽で続けやすい定番

ヨーグルトや牛乳、チーズなどの乳製品にはトリプトファンが豊富。特に朝食に取り入れると、セロトニン合成のリズムを整えるのに効果的です。「ヨーグルト+バナナ+オートミール」は、トリプトファン・ビタミンB群・炭水化物を一度に摂れる理想的な朝食です。

大豆製品 ─ 日本人に馴染み深い植物性たんぱく源

豆腐、納豆、きな粉、豆乳なども優秀な供給源。納豆ごはんや味噌汁などは無理なく続けられ、腸活との相乗効果も期待できます。

魚・肉・卵 ─ 高たんぱくで吸収効率も高い

サーモン、鶏むね肉、卵などは吸収効率が高く、筋肉維持にも役立ちます。魚のDHA/EPAや肉の鉄・亜鉛など、代謝を支える栄養も一緒に摂れます。

ナッツ・種実類 ─ 間食やトッピングに最適

アーモンド、カシューナッツ、ゴマ、ひまわりの種は、少量で良質なトリプトファンを補える便利食材。マグネシウムやビタミンEも含み、ストレス対策に役立ちます。

穀類・炭水化物 ─ 吸収を助ける組み合わせ

白米・玄米・全粒粉パン・オートミールなどの炭水化物と一緒に摂ると、インスリン分泌が促され、トリプトファンが脳へ届きやすくなります。主食を抜かないバランス食がポイントです。

含有量は品種・部位・製法で差があります。複数のタンパク源をローテーションするのが実用的です。

よく食べる食材のとり入れ方(一覧表)

トリプトファン含有の目安(可食部100gあたり/代表値)
食品代表的な1食量の目安取り入れ方の例相乗栄養素の例トリプトファン(mg/100g・代表値)
ヨーグルト(プレーン)150g(小鉢1杯)朝食にバナナ+オートミールを加えて丼でビタミンB6(バナナ)、炭水化物(オートミール)約50
納豆1パック(40~50g)納豆ごはん+味噌汁で和朝食に鉄・マグネシウム、ビタミンK2(発酵食品)約210
鶏卵(全卵)1~2個ゆで卵やスクランブルで手軽にたんぱく追加ビタミンB群、鉄、コリン約170
鶏むね(皮なし・生)80~120g(手のひら1枚)塩?漬けのソテーやサラダチキンでナイアシン、ビタミンB6約280
鮭(生・切り身)80~100g(1切)焼き鮭やムニエル、おにぎり具材にDHA・EPA、ビタミンD約220
全粒粉パン1~2枚(60?120g)卵やチーズを合わせてオープンサンド食物繊維、鉄、亜鉛、マグネシウム約170
オートミール(乾)30~50g(ドライ)牛乳or豆乳+ヨーグルトで「オーバーナイト」食物繊維、ビタミンB群、カルシウム約230

※ 数値は文部科学省『日本食品標準成分表(八訂) アミノ酸成分表』の代表値に基づき、小数点以下を四捨五入した可食部100gあたりの目安です。製品・部位・調理条件で変動します。

第4章:摂取量の目安とタイミング(継続のコツ)

トリプトファンは、ほとんどの人が日常の食事から十分に摂取できる栄養素です。厚生労働省の指標では単独の目標量は設けられていませんが、専門的レビューでは体重1kgあたりおよそ3.5?5mg生理的な必要量(窒素バランス維持)の目安とされています(例:60kgで210?300mg/日)。

朝食での摂取が効果的です。朝にトリプトファンを含む食事を摂ると日中のセロトニン合成が高まり、夜にメラトニンへと変わりやすくなります。炭水化物+ビタミンB群を一緒に摂ると、吸収と働きがスムーズです。

  • 例:ヨーグルト+オートミール+バナナ/納豆ごはん+味噌汁+焼き鮭
  • サプリは朝?日中の食後が目安。夜の高たんぱく摂取は就寝直前を避けましょう。

代表的な研究例(セロトニン関連の知見)

  • 短期補給試験:健常成人に2.8g/日を6日間摂ってもらうと、不公平な申し出への反応の出方が変わるという結果が出ました(Frontiers in Psychology, 2015)。
  • 食事介入:4週間、500mg/日相当を摂れる食事にすると、人の気持ちを読むテストの成績や脳の反応の違いが報告されました(Scientific Reports, 2021)。
  • 睡眠のメタ解析:複数研究の統合結果では、1g/日以上の補給で睡眠の質が良くなる傾向が示されました(Crit Rev Food Sci Nutr, 2022)。
  • 就寝前投与の試験:就寝前に摂ると、眠りの効率が上がったという報告があります(Psychopharmacology, 2019)。

※ これらは脳内セロトニンそのものを直接測定したものではなく、行動の変化・睡眠の質・脳の反応などの“間接的な手がかり”で評価しています。

研究の要点(用量・期間・主要アウトカム)

デザイン対象/期間用量主要アウトカム出典
二重盲検・短期補給健常成人 / 6日2.8g/日不公平な申し出への反応が穏やかにFront Psychol 2015
食事介入(並行群)成人 / 4週間約500mg/日相当社会認知テストの成績と脳の反応に差Sci Rep 2021
メタ解析成人 / 複数試験1g/日睡眠の質が改善CRFSN 2022
クロスオーバー成人 / 短期就寝前摂取睡眠効率の向上Psychopharmacol 2019

「必要量」と「体感量」の違い

レビューや介入研究から、4mg/kg/日前後は“必要量”の目安であり、気分・睡眠などの体感改善を狙う研究では、それより多い量(例:1g/日(約14mg/kg/日)2.8g/日(約40mg/kg/日))が短期間で用いられることがあります。もっとも、高用量は副作用や薬との相互作用のリスクが上がるため、サプリでの実践は医療専門家と相談のうえ、少量から段階的にが安全です。

継続のコツ 体内に貯めておけないため、「少しずつ毎日」が近道です。朝にタンパク質源を足すだけでもリズムが整いやすくなります。

第5章:サプリの選び方と注意点(品質と相乗成分)

基本は食事からの摂取ですが、忙しい日が続くときなどはサプリメントで補う方法もあります。安心して続けるために、以下のポイントを確認しましょう。

サプリ選びのチェックリスト

  • 配合量:目的に応じて選ぶ。
    • 日常の補助100~250mg/日(食事を基本に不足分を補う)。
    • 睡眠の質(研究例)500~1,000mg/日が短期試験やメタ解析で用いられることがあります。
    • 気分・行動(研究例)約2.8g/日(短期)など高用量の例も(要・専門家管理)。
  • 品質・安全性:GMP認証や国内製造、第三者検査の有無を確認。
  • 相乗成分:ビタミンB6、ナイアシン、マグネシウム、鉄などを同時配合。
  • 添加物・アレルゲン:成分表示を確認し、気になる添加物は避ける。

ステップアップ用量(目安)

  1. Step1:まずは100~250mg/日2~4週間。食事の見直し(朝のたんぱく質+日光)とセット。
  2. Step2:体感が弱い場合、400~500mg/日2週間。寝つき・目覚め・日中の気分を記録。
  3. Step3:必要に応じて最大1,000mg/日まで短期で検討(薬との併用や持病がある場合は医師相談)。
  4. Stop4:違和感(胃部不快、頭痛、眠気など)や服薬変更があれば中止→専門家へ

※ 研究で用いられた用量を参考にした一般向けの目安です。長期の高用量は推奨しません。
高用量の摂取では吐き気、嘔吐、めまい、眠気などの副作用が報告されています。食品安全委員会(FSCJ)の評価でも、過剰摂取に伴う健康影響の可能性が指摘されています(出典:食品安全委員会・評価書)。

飲むタイミング

朝~日中の食後が基本。日光を浴びる時間帯に合わせると、日中のセロトニン合成を後押しし、夜のメラトニン生成につながります。

注意 抗うつ薬(SSRI・SNRI・MAOIなど)を服用中の方は、必ず医師に相談してください。妊娠中・授乳中・持病のある方も自己判断は避けましょう。
厚労省・WHOは「まずは食事から」を基本とし、サプリは不足を補う補助と位置づけています。

第6章:副作用・相互作用・注意事項(安全に活用)

トリプトファンは食品に含まれる天然のアミノ酸で、通常の食事量では概ね安全です。ただし、サプリで高用量を継続摂取すると、まれに胃部不快・下痢・眠気・頭痛などの報告があります。

薬との相互作用

抗うつ薬(SSRI・SNRI・MAOIなど)との併用は、脳内セロトニンの過剰によるセロトニン症候群の懸念があるため必ず医師に相談してください。

対象者別の配慮

妊娠・授乳中、子ども・高齢者は個人差が大きく、サプリの安全性データも限られます。医療従事者の指導のもとで利用しましょう。

自己管理のポイント 用法・用量を守り、体調変化を感じたらすぐ摂取を中止して医療機関へ相談を。

第7章:生活への取り入れ方(朝・昼・夜の実践)

トリプトファンは、サプリや特別な食品がなくても、毎日の食事と習慣で無理なく取り入れられます。朝・昼・夜の3つの時間帯に分けて実践例をご紹介します。

朝 ─ セロトニンのスイッチを入れる

ヨーグルト+バナナ+オートミール、納豆ごはん+味噌汁+焼き鮭など。炭水化物+たんぱく質+B群の組み合わせで、日中のセロトニン合成を後押しします。朝日を浴びる習慣もプラス。

昼 ─ リズム維持とストレス対策

鶏むねのサラダ+雑穀ごはん、豆腐ハンバーグ+野菜炒めなど。外食・コンビニでは豆乳・ナッツ・チーズを活用して、血糖の急上昇を避けつつたんぱく質を確保します。

夜 ─ リラックスと回復の準備

豆腐と野菜のスープ、鶏むねとブロッコリーの炒め物、白身魚+温野菜など、消化の良いメニューを就寝2?3時間前までに。ブルーライトを控え、照明を落としてメラトニン生成をサポート。

習慣化のヒント 完璧より継続。まずは「朝食にたんぱく質を足す」だけでも体感が変わりやすく、続けやすくなります。

第8章:よくある質問(Q&A)

Q1. いつ摂るのが良い?

A. 朝が最適です。朝食でトリプトファン、炭水化物、ビタミンB6をそろえると、日中のセロトニン合成が高まり、夜にメラトニンへとスムーズに変わります。たとえば「ヨーグルト+オートミール+バナナ」や「納豆ごはん+味噌汁+鮭」。通勤時に日光を浴びる、夜は強い光(ブルーライト)を避けるなど、生活リズムの工夫も合わせると効果を実感しやすくなります。

Q2. 食事だけで足りる?

A. 多くの人は食事で十分まかなえます。一般的な目安は体重1kgあたり約4mgで、肉・魚・卵・大豆製品・乳製品をバランスよく食べればクリア可能です。忙しい日が続くなど一時的に偏るときのみ、サプリを補助的に活用しましょう。過剰摂取で効果が高まるわけではない点に注意してください。

Q3. 妊娠中・授乳中は?

A. 食事由来は概ね安全とされていますが、サプリの自己判断は避けましょう。妊娠・授乳期は代謝や感受性の個人差が大きいため、サプリを検討する場合は必ず医師や管理栄養士に相談してください。まずは食事でタンパク源(魚、肉、卵、大豆、乳製品)をバランスよく取り入れることが基本です。

Q4. 摂りすぎのリスクは?

A. 食事で過量になることは稀ですが、サプリで高用量を続けると胃部不快・眠気・頭痛などの報告があります。用法・用量を厳守し、違和感があれば中止して医療機関へ。体質や既往歴によっては少量でも合わない場合があるため、初めは少なめの量から様子を見ると安心です。

Q5. 薬との併用は?

A. SSRI・SNRI・MAOI等の抗うつ薬とトリプトファンの併用は、脳内セロトニン過剰(セロトニン症候群)の懸念があります。服薬中の方は必ず主治医に相談し、勝手に併用しないでください。サプリ全般に言えることですが、服薬状況の共有が安全管理の第一歩です。

Q6. どのくらいで実感できる?

A. 個人差はありますが、2?4週間ほど続けると「寝つき」「目覚め」「気分の安定」などの変化を感じる人がいます。実際、複数の短期試験やメタ解析では、500?1,000mg/日(短期)の補給で睡眠の質が改善したという結果が報告されています。まずは少量から始め、朝の食事・日光・夜の光対策と組み合わせるほど実感しやすくなります。

第9章:まとめ

  • トリプトファンはセロトニン/メラトニンの材料となる必須アミノ酸。
  • 朝のタンパク質+炭水化物、B群や鉄・Mgをバランスよく。
  • サプリは補助。用量厳守・対象者は専門家へ相談。
  • 小さな実践の積み重ねが、気分の安定睡眠の質向上につながります。
✍ 著者情報

プレミアム・ライフ編集部:健康食品業界に15年以上携わる編集チームが、自社ECでの経験をもとにコーヒーやサプリメントに関する専門記事を発信しています。

【参考文献】